「教えることで学ぶ(Learning by teaching)」


17歳のとき、地元山梨の中高生に英語を教え始めました。 自分自身と日本の英語教育の現状に怒りや不満がありました。全く理解できなかったのはなぜ教科書のすべての文章を単純に翻訳しなければならないのか、なぜ実際に使わずに文法のルールや専門用語を記憶しなければならないのか。これらの意味のない教育が私を狂わせました。 このグローバル化した社会で役に立たないテストのためだけに勉強をするということがいかに無意味であるかを伝えたかったのです。そこで英語を教え始めました。教え始めて1年半後、面白く予期せぬことが生徒ではなく自分に起こっていることに気づき始めました。 自分の英語の偏差値が急激に上がり始めたのです。自分のために勉強したのではなく、ただ生徒に英語を教えただけです。自分のための努力ではないにも関わらず、全国模試で8位にランクしました。 それは私にとって物凄い発見でした。教えることは自分の学びになるということです。そこで全ての生徒に教えさせることにしました。そしてどんどん生徒が私の学校に来るようになりました。 ちょうどこの頃、運良く青山学院大学に合格しました。しかし1つ問題がありました。私が東京での大学生活を満喫している間、誰かが山梨の生徒の面倒を見ておく必要がありました。 最も有力な候補は、最もできの良くない1人目の生徒でした。なので全ての道理に反して彼に教えてもらうことにしました。数カ月後、もう一つの軌跡がこの生徒に起こりました。彼の英語の成績も急上昇し、同様に青山学院大学に合格しました。でも彼のストーリーはまだ終わりません、青山学院大学を卒業後、驚くべきことにワシントンDCにある在米日本大使館で働くことになりました。 つまり教えれば教えるほど自分自身が学ぶことができるということです。生徒が学習内容に対して率先することで、自分自身の学びがよくなるということです。多くの教え子がLRTという教えることで学ぶサイクルを実践しました。 学び、復習し、教えるシステムです。 まず生徒が他の人から学びます。そして学んだことを復習します。そして最後に他の生徒に教えるわけです。生徒は自分たちのために勉強しているのではなく、他の生徒に教えるための準備をしているのです。これが彼らにプレッシャーと責任を与えます。有意義な形で学習内容と関わります。全ての過程の最後には学んだことを人に共有することで生徒は達成感を得られます。教えることの利点は生徒にとっての身近なロールモデルやメンターになることです。そしてこれが私のアプローチとなりました。一度教えたら、生徒に教えさせるということです。 そこで判明したのが私のこの経験は既存の研究によって裏付けられていました。こちらを見てください。アメリカ国立訓練研究所によって開発されたラーニング・ピラミッドです。彼らが発見したのは講義が情報を伝えるのに最も非効率的な方法だということです。反対側の尺度では生徒が教師の役割を強いられたとき、教えた情報の約90%を記憶することができます。なので生徒が他の生徒に教えるということは完全に理にかなっているということです。 さらにこれを徹底するため私は生徒が教えることで学びを最大化するイングリッシュキャンプを開催することにしました。キャンプの先生は勿論、元生徒たちです。年月が経つにつれてたくさんの生徒がこのキャンプに参加し、私の人生の生きがいとなりました。 24歳になるまでに500人以上の生徒を指導してきました。しかし私は全然満足言っていませんでした。より社会に大きなインパクトを与えたいと感じました。そこで3年間イギリスの大学院に行き日本に帰ってきました。

そしてタクトピアが始まりました。 タクトピアは現在世界5ヶ所に拠点を持つ教育会社です。我々の仕事に対するイデオロギーは創造性と多様性の融合により生徒が最大の価値を得ることができる共創的な学びの環境が生まれるということです。

チームと長い議論を重ね我々は海外大学から学生を招待して行う白熱イングリッシュキャンプを開催することにしました。白熱とは日本語で燃え上がっているワクワクするといった意味です。 キャンプのコンセプトは至ってシンプルです。海外大学生から学んだことを生徒が教えます。

キャンプの流れを紹介させてください。 まず生徒は多様なバックグラウンドを持つ海外大学生に出逢います。去年は700もの応募があり最も優秀な12名の海外大学生を選出しました。 次に生徒は海外大学生がそれぞれの大学で通常学んでいる学問に触れます。そして生徒はその情報をキャンプの最後に再び教えるかを話し合います。 最後に白熱授業を作り最終発表で教えます。 過去10年間教えることで学ぶということを信じ日本全国でキャンプを実施してきました。この白熱イングリッシュキャンプは全ての参加者の人生にダイナミックな変化をもたらしました。 しかしながらこのキャンプを通して教えることで学ぶの裏側により重要な役割があることに気づきました。

それは「意味のあるやりとり」です。意味のあるやりとりとは人と上質な時間を作ることです。他の人に教えるとき、この意味のあるやりとりを頻繁に目撃します。この意味のあるやりとりが生徒の成功へのカギでした。

こちらはなゆです。鳥取出身の中学校1年生です。彼女はとてもシャイで当初全く英語を話しませんでした。実はキャンプ初日に会場に向かう途中で道に迷いないてしまうような子でした。私はとても心配して彼女の先生にキャンプ中にどう手助けをしようか相談までしていました。 私ができたことはただ待って見つめるだけでした。 キャンプ最終日に彼女が私のところにきて「英語で好きな色ってどうやって聞けばいいんですか?」と尋ねてきました。私はWhat colour do you like?だよと伝えなぜ突然そのような質問をしてきたのか不思議に思っていました。 そして私は彼女が海外大学生のところに行き慎重に教えた文を伝え彼らの好きな色の折り紙を渡していました。 これは意味のあるやりとりを受けて涙するなゆです。この海外大学生と心から繋がり意味のあるやりとりを通して相互理解をしていました。

私が意味のあるやりとりと呼ぶこの上質な時間は教育においてとても重要です。 意味のあるやりとりとは他の人の考えに共感し、コミュニケーションの中で幸せを共有し合うことです。それは学びを刺激し会話に火を付けます。 意味のあるやりとりは人々を感動させ、鼓舞し、笑顔やときには涙させます。

意味のあるやりとりは母親と赤ちゃんのコミュニケーションに似ていると信じています。それは最大の注意と愛情とともに物事を扱うことです。教えることとは他人に知識を伝達することではありません。教えることとは意味のあるやりとりを作ることです。教育者として生徒と接するとき、そのやりとりに意味があるかどうかを心に留めておいてください。ありがとうございました。